
こんにちは。金剛禅総本山少林寺 木曽川道院・岩倉道院の加藤です。
武専の現場でも、道院での日々の修練でも、拳士の皆さんからよく相談を受けるテーマがあります。それが「技術の壁」、つまり「この技がどうしてもかからない」という悩みです。
- この技がどうしてもかからない
- 最後の決めがうまくできない
- 手本通りにやっているのに、相手が崩れない
少林寺拳法を修練していると、誰もが一度はこうした壁にぶつかります。
今回は、そんなときに私自身が最初に何を確認しているのか、武専教師としての私見をお伝えします。
結論から言うと、技がかからない原因の多くは「手の動き」そのものではなく、技をかける直前の「自分と相手の位置関係」にあります。
技がかからない原因は「技の手前」にある

技がうまくかからないとき、多くの拳士はまず手元に意識を向けます。
- 手首の返し方が違うのかな
- もっと強く引いたほうがいいのかな
- もっと力を入れたほうがいいのかな
もちろん、手の使い方も大切な要素です。しかし、武専で指導する立場として、また自分自身が修練を続ける中で強く感じるのは、技がかからない原因が、実はその「直前」の身体の位置にあることが少なくないということです。
具体的には、次のような要素です。
- 相手との距離
- 自分の立っている位置
- 身体の向き
- 相手との角度
- 技を仕掛ける前の体さばき
こうした部分がわずかにずれているだけで、その後どれだけ手を正確に動かしても、思うように技はかかりません。逆に言えば、位置関係さえ整えば、これまで苦労していた技が驚くほど自然にかかることがあるのです。
「鍵穴に鍵が入っているか」で考えてみる
私はこれを、よく「鍵と鍵穴」に例えて説明しています。
鍵穴に正しく鍵が入っていない状態で力いっぱい回しても、鍵はなかなか回りません。それどころか、さらに力を加えれば鍵が折れてしまうこともあります。
大切なのは、力を加えることよりも先に、**「鍵がスッと入る位置を作ること」**です。
少林寺拳法の技も、これと似ています。技がかからないからといって、さらに力を加える。もっと強く引く。もっと手首を返す。——そうする前に、一度立ち止まって次のように自問してみてください。
「そもそも自分は、技をかけやすい位置にいるだろうか?」
この一呼吸が、技術の壁を越える大きなヒントになります。
次の修練で確認したい5つのチェックポイント
もし修練中に「この技はうまくいかないな」と感じたら、一度だけ手元から意識を離し、次の5点を確認してみてください。
- 相手に対して、自分の足の位置は適切か
- 相手との距離は近すぎないか、遠すぎないか
- 自分の身体の向きはどうなっているか
- 相手との角度は適切か
- 技をかける前の体さばきができているか
つまり、「技をかける」前に「技をかけられる位置にいるか」を確認するということです。これだけでも、今までとは違った感覚を得られることがあります。
技術が教えてくれる「八方目」という考え方
少林寺拳法には「八方目(はっぽうもく)」という技術があります。
これの要素は一つのものだけを見るのではなく、周囲を広く見る。相手だけを見るのではなく、自分自身や周囲の状況にも意識を向ける——という教えでも裏打ちされています。
これは、今回の「技がかからない」という話にもそのままつながっています。
技がうまくいかないとき、私たちはつい「手」だけを見てしまいます。
しかし、本当に見るべきものは手だけではありません。
- 自分の足元
- 身体の向き
- 相手との距離
- 相手の身体の状態
- 自分と相手を含めた全体の位置関係
一つの部分だけを見るのではなく、全体を見る。
そう考えると、「八方目」は単なる技術上の考え方ではなく、修練を通して身につく物事の捉え方そのものだと私は感じています。
道場の外でも同じことが起こる
この考え方は、少林寺拳法の技術だけに限った話ではないかもしれません。
私たちは社会の中で生活していると、目の前の問題に集中するあまり、周囲が見えなくなることがあります。
仕事でも、人間関係でも、「どうしてうまくいかないのだろう」と考え続けているのに、なかなか答えが見つからない——
そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
そんなとき、目の前の問題だけを何とかしようとするのではなく、一度立ち止まって次のように視野を広げてみる。
- 自分はいま、どの位置にいるのだろう
- 相手からはどう見えているのだろう
- 周囲では何が起きているのだろう
すると、それまで見えていなかったものが見えてくることがあります。
少林寺拳法の技術には、こうした社会の中で生きていくためのヒントも含まれていると、私は考えています。
技を学ぶことは、生き方を学ぶこと
少林寺拳法の基本技術には、一つひとつに意味があります。それは、単に相手に技をかけるためだけのものではありません。
- 身体の使い方
- 相手との関係の築き方
- 自分自身の心身の状態への気づき
- 周囲を見る力
- 相手を感じ取る力
- その場に応じて自分を変化させる力
技術を深く学んでいくと、こうした一つひとつの要素が見えてくるようになります。
それを意識しながら修練を続けることで、技術だけでなく、人との向き合い方や自分自身の生き方にも少しずつ変化が生まれてくるのではないでしょうか。
少林寺拳法の修練とは、単に「技ができるようになる」ことだけではなく、技術を通して自分自身を成長させていくことでもある——私はそう考えています。
技がかからないときこそ、一度立ち止まる
次の修練で、どうしても技がかからないことがあったら、すぐに「もっと力を入れよう」と考えるのではなく、一度立ち止まってみてください。
- 自分の立ち位置はどうだろう?
- 相手との距離はどうだろう?
- 身体の向きはどうだろう?
そして、少し視野を広げてみる。技だけを見ない。相手だけを見ない。
自分だけを見ない。
全体を見る。
そこに、技術の壁を越えるヒントが隠れています。技術を学びながら、その技術が何を教えてくれているのかを考える。
その積み重ねが、やがて技術だけでなく、自分自身の成長にもつながっていく——
そこに、少林寺拳法を学ぶ面白さがあると私は思っています。
武専教師として、そして一人の拳士として、これからも修練の中で感じたことをお伝えしていきます。
よくある質問(Q&A)
Q. 少林寺拳法で技がかからないとき、まず何を見直せばいいですか?
A. 手首の返しや力の強さといった「手の動き」よりも先に、相手との距離・自分の立ち位置・身体の向き・角度・体さばきといった「技をかける直前の位置関係」を見直すことが有効です。
Q. 「八方目」とはどういう意味ですか?
A. 一つの対象だけに集中するのではなく、自分自身や相手、周囲の状況まで広く意識を向けるという少林寺拳法の考え方です。技術面だけでなく、日常生活や仕事における物事の捉え方にも通じる考え方とされています。
Q. 武専(武道専門コース)とは何ですか?
A. 道院や支部での通常修練とは別に行われる、少林寺拳法の指導者養成・自己研鑽のための学びの場です。現在は一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITYが全国で運営しています。詳しくは少林寺拳法とはのページもご参照ください。
Q. 木曽川道院・岩倉道院で少林寺拳法を体験できますか?
A. はい、体験修練を随時受け付けています。詳細は体験者募集ページをご覧ください。

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